葬儀、告別式、通夜での挨拶について


【目 次】

 1.喪主の挨拶

 (1)通夜・通夜振る舞いでの挨拶

 (2)葬儀・告別式での挨拶

 (3)精進落としでの挨拶

2.僧侶への挨拶

3.葬儀後の会社への挨拶

4.葬儀後の挨拶まわり

5.家族葬の場合は通知状を送付

6.葬儀で挨拶をする時のポイント

 (1)避ける言葉

 (2)挨拶の時間の長さ

7.葬儀に参列した際の挨拶

喪主の挨拶

喪主は葬儀における責任者となるため、葬儀を執り行う上で様々な役割を担う必要があります。具体的には、葬儀社との打ち合わせから始まり、葬儀プランの決定、親族、参列者や僧侶の対応、香典返しの準備など葬儀に関するさまざまなことを行わなくてはなりません。

その中でも特に重要な役割としては、場面に合わせた「挨拶」を行うことです。葬儀に参列された方々やお勤めを頂く僧侶などに対して一人一人に挨拶をすることもあれば、全体に向け挨拶を行う場面もあります。

 このように喪主は状況に応じて挨拶をする機会がいくつかあり、慣れていない葬儀でいきなり挨拶をすることになっても、その役割を十分に果たすことは非常に難しいでしょう。そのためどのような場面で、どのような内容を話せば良いか事前に理解して、いざという時に慌てることなく、しっかりとポイントをおさえた挨拶ができるように準備を整えておくことが大切です。

 この章では、3つの場面別に喪主が行う挨拶の内容やタイミングをご紹介いたします。また、実際にすぐ使用することができる挨拶の例文も併せてご紹介します。

(1)通夜、通夜振る舞いでの挨拶

 通夜には早い方であれば、開式時間の1時間前ぐらいに通夜会場にいらっしゃいます。参列者の中には普段は会うことのない親戚や故人の会社関係者もいらっしゃるため、面識がない方にも生前のお礼も含め、しっかりと顔合わせて挨拶をするようにしましょう。

また、お勤めを頂く僧侶は、通夜会場の控室に入られたタイミングで「どうぞよろしくお願いいたします。」といった言葉を添えて挨拶をします。

通夜の最後には、喪主は閉式の挨拶を行います。この時の挨拶の内容は参列者に対して、通夜に参列していただいたことへの感謝を述べます。また、この後に行う通夜振る舞いや、翌日の葬儀・告別式の案内も併せて行います。これは司会者が述べる場合もありますので、事前によく打ち合わせをしておきましょう。

挨拶の例文としては「本日はお忙しいところ、通夜に足を運んでいただき誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。〇〇も喜んでいると思います。別室にて粗宴を用意しておりますので、ご都合がよろしければお召し上がりください。なお、明日の告別式は〇〇斎場で〇〇時から行いますのでよろしくお願い申し上げます。」

(2)葬儀、告別式での挨拶

 葬儀・告別式では祭壇の前に立って、参列者へ向けた「喪主挨拶」をする機会があります。この時の挨拶の内容は参列のお礼、故人の人柄が伝わるエピソード、生前の厚意への感謝、そして遺族への温かいご支援のお願いを述べる挨拶が良いでしょう。

また、挨拶をするタイミングは告別式の最後、もしくは出棺の前が多いようですが、告別式の中盤で挨拶する場合もありますので事前に葬儀社と打合せをしておくと良いでしょう。

 挨拶の例文としては「遺族を代表して一言挨拶を申し上げます。私は長男の〇〇でございます。本日は、ご多用中のところ、父 〇〇の葬儀式並びに告別式にご会葬くださいまして、誠にありがとうございました。生前父が賜りましたご厚誼、ご厚情に対しましても深く感謝申し上げます。生前は〇〇、〇〇などの趣味を持っており、病床にふせった後もそれは変わらず、最期まで変わらぬ姿を私たちに見せてくれました。本日このように皆さまにお集まりいただきまして、昨日の通夜、本日の告別式を滞りなく執り行うことができ、父も喜んでいることと思います。今ここに、生前賜りました、ご厚情に対し、厚くお礼申し上げますと共に、今後とも私ども遺族に変わりなきご厚情を賜りますようお願いいたします。」などです。

(3)精進落としでの挨拶

 遺族が葬儀の後に会葬者や僧侶を労う目的で用意する食事を、「精進落とし」といいます。精進落としの会食は火葬中か、火葬後に葬儀式場へ戻ってきてから行われるのが一般的です。喪主は精進落としの会食を始める前に挨拶と献杯の発声をします。会食の終わりの際にはお礼の言葉とともに締めの挨拶が必要です。

 会食前の挨拶の例文としては、「本日はご多忙のところ、〇〇のために葬儀、告別式にご参列いただきましてありがとうございました。皆様のお力添えをいただき、無事に通夜、葬儀、告別式を滞りなく終えることができました。ささやかではございますが、食事を用意いたしましたので、ごゆっくりおくつろぎ下さいませ。」

 会食の最後の挨拶の例文は、「本日は長い時間、〇〇のためにお付き合い頂き誠にありがとうございました。皆様に心からのお見送りをいただき、故人も大変喜んでいることと思います。まだまだ、ゆっくりとご歓談していただきたいところですが、そろそろお開きとさせていただきます。本日は誠にありがとうございました。皆様、どうぞお気をつけてお帰りください。」などです。参考になさってください。

僧侶への挨拶

仏式の場合、僧侶と最初に顔を合わせるのは、故人が亡くなられてから行う「枕経(臨終勤行)」の時が多いと思います。その際に、僧侶に挨拶の上、通夜葬儀の依頼や日程調整を行います。この時には、取り立てて何かを用意しなければならないということはなく、まずは心を込めて挨拶をするのが肝心です。

また、僧侶が読経を終えられたらお茶をお出しするとより丁寧です。葬儀会館などでは、葬儀社のスタッフがお茶をお出しすることが多いですが、ご自宅の場合はご遺族・ご親族で出されるとよいでしょう。

通夜や葬儀の際は、僧侶は着替えなどを行うために専用の控室に入ります。開式前に控室でひとこと挨拶に伺うとよいでしょう。

また、読経が一人ではなく他の僧侶も一緒になされる場合は、開式前の挨拶の際に脇導師(主たる僧侶の脇で読経する僧侶)の方へのお布施をお預けすることも多いようです。このタイミングについては、葬儀を依頼したお寺様より案内があることがあります。

また、菩提寺様へのお布施は葬儀の翌日以降にお寺に直接お伺いして、通夜や葬儀のお礼とともにお渡しします。この時、「御車代」も合わせてお渡しするとよいでしょう。葬儀当日にお寺様用の精進落しをご用意されなかった場合は「御膳料」もお包みするのが一般的です。

葬儀後の会社への挨拶

 勤め先の会社への挨拶は、忌引などが終わって出社したら速やかに行いましょう。

挨拶の一般的な内容としては、通夜葬儀が無事終わったことの報告が主になります。併せて職場を留守にしたお詫びとお礼、香典やご供花、お供えなどを頂いた場合にはその御礼も伝えましょう。

また、気持ちとして菓子折りなどを持参するのもよいでしょう。個包装で簡単に分けられる、ある程度日持ちのするものがおすすめです。具体的にはクッキーやラスク、マドレーヌ、せんべいなどがよいでしょう。

故人が在職中であった場合には、故人の勤務先へ事前に電話で連絡後、挨拶に伺いましょう。直属の上司や葬儀を手伝ってくれた方へお礼を述べます。挨拶と併せて故人が使用していた机やロッカーなどの片づけ・掃除も行いましょう。在職中のお礼の意味を込めて手土産を持参しても丁寧でよいです。

葬儀後の挨拶まわり

葬儀後の挨拶まわりは、可能であれば葬儀の翌日に行うのがベストです。あまり遅くなっても失礼にあたるので、初七日までには行いましょう。葬儀と同日に挨拶を行う場合は喪服を着用しますが、それ以降の日であれば地味な平服で大丈夫です。

 挨拶まわりは、喪主と遺族一人の2名で行うのが一般的です。挨拶の際は長居せず早めに引き上げましょう。主だった方へは喪主がお礼を述べますが、喪主が未成年や高齢者の場合は代理として遺族代表が出向く場合があります。

挨拶に出向く範囲としては、ご近所や故人が生前特にお世話になった方々などがあげられます。

挨拶の内容はご近所への挨拶を例にあげると、故人が生前中お世話になったお礼とともに、葬儀において受付など、手を借りたことへのお礼が主になります。特に自宅で葬儀を行った場合は、車の出し入れなどで近所の方には何かとお世話になります。菓子折りなどの手土産を持参し、感謝の気持ちを伝えましょう。

家族葬の場合は通知状を送る

 最近では一般の方にはご葬儀の案内をせず、家族や親戚のみで葬儀を行う「家族葬」も増えてきました。

そのような形式で葬儀を行った場合は、一般の方へ家族・親族のみで葬儀を行った旨の通知状を送るとよいでしょう。通知状を送る時期の目安としては、四十九日の満中陰が過ぎた頃がよいでしょう。

また、11月から12月頃に送る年賀欠礼ハガキでまかなう場合もあります。通知状を送る相手は故人との関係性によって、遺族で検討されるとよいでしょう。

ただし、ご近所など顔を合わす機会が多い方には前項のとおり、出向いて挨拶する方がよいでしょう。

通知状に記載する内容としては、

①故人の命日

②家族葬で送ったためご案内が遅くなったことのお詫び

③故人生前中のお礼

 以上3点の内容を喪中用にデザインされたハガキなどに印刷して送付するとよいでしょう。

葬儀で挨拶をする時のポイント

(1)避ける言葉

葬儀の際の挨拶では、できるだけ避けたほうがよい言葉(忌み言葉)があります。

忌み言葉とは、縁起が悪いと感じさせる言葉のことで、その言葉がご遺族の耳に入ると、結果的に傷つけてしまうこともあります。

 また、忌み言葉を知らずに使ってしまうことによって常識が無い人だと思われてしまうこともあるでしょう。これは、出席する側としてだけでなく、遺族側の立場になった場合でも同じことが言えます。そのため、忌み言葉の種類や言い換えの表現を抑えておく必要があります。

 忌み言葉にはいくつかの種類があります。代表的な2種類を解説します。

①不幸を連想させてしまう言葉

 不幸を連想させてしまう言葉とは不幸が続いたり、繰り返すことを連想させる言葉のことです。また、生や死を直接的に表現する言葉もご遺族を傷つけるだけでなく、不快な思いをさせてしまうため言い換えが必要です。

このような忌み言葉の言い換え表現としては、「再び→今一度」「追って→後ほど」「忙しい→多用」「引き続き→これからも」等があげられます。

②重ね言葉

 重ね言葉とは、同じ言葉や同じ意味の言葉を重ねて使っている言葉のことです。不幸が重なることや繰り返すことを連想させるため、言い換えが必要です。

重ね言葉の言い換え表現としては、「いろいろ→多くの、もっと」「度々→よく」「くれぐれも→十分に」「ますます→もっと」「ときどき→時折」「たまたま→珍しく」「いよいよ→一段と」等があげられます。

(2)挨拶の時間の長さ

 ご葬儀における挨拶の時間はあまり長すぎないのが良いとされています。喪主挨拶であれば、1~3分程にまとめることができればベストです。

挨拶の内容としては、

①葬儀・告別式に参列いただいたことに対するお礼

②故人が生前中にお世話になったお礼

③遺族への力添えなど今後のお願い

など以上の内容に加え故人のエピソードや、逝去に至る過程を述べる場合もあります。ただし、伝えたいことすべてを盛り込むと長くなりすぎて参列された方が失礼に感じたりすることもありますので、簡潔にまとめるとよいでしょう。

 実際に話す場合はゆっくりと発音するのがおすすめです。葬儀で挨拶をする時は疲れや緊張により、自分で思っているよりも早口になりがちです。「少しゆっくりめかな?」と思うぐらいのスピードで話すと、参列者も聞き取りやすいでしょう。

葬儀に参列した時の挨拶

 ここまで葬儀を執り行う側の挨拶について解説してきましたが、最後に葬儀に参列する場合の挨拶について触れましょう。

葬儀に参列した際の挨拶は、可能な限り簡潔にしましょう。喪主や遺族は葬儀の準備などで心身ともに疲れていることが多く、長々と話してしまうと負担をかけてしまうこともあります。ですから、「この度はご愁傷さまでした」などの一般的な簡潔な挨拶にとどめておくのがよいでしょう。また、ご遺族に「頑張って」などと言うのも控えましょう。

積もる話はご葬儀が終わり、すべてが落ち着いてからゆっくりすることとして、葬儀当日はできるだけご遺族の負担にならないよう配慮。